「惡の華」「ぼくは麻理のなか」など、心情描写が特徴的な数々の名作を世に出してきた奇才漫画家・押見修造
彼の描く「血の轍」13巻の感想や考察、見どころを書いていきます
あらすじのはじめの文が、
比類なき物語は、遂に「本章」へ!!
だったのを見て、「いややっとかい!」とツッコんでしまいました
大好きな作品なので続くのはめちゃくちゃ嬉しいんですけど、12巻の終わり方見るともう最後も近いのかな〜と思った方も多いハズです
裏切ってくれて、どんな展開になるのかワクワクが止まりません
それでは参りましょう!
「血の轍」13巻の感想・考察【ネタバレ】
表紙がもう最終巻・・・
いや、こわっっっ
1〜12巻までの「血の轍」の表紙は、温かい色 or 血の赤だったんですよね
それが一転して青
色としてはハデなのですが、明るい印象は受けません
大人になった静一の顔の半分が、暗い青で塗りつぶされていてダークな印象を受けます
なにげに静一が一人で表紙になるのは初めてで、静一にスポットが当たっている巻なのもわかりますね
というか死ぬまでお父さんは表紙になりませんでした
それは、この漫画にとって父が大切でないことを表すと同時に、静一にとって父がそこまで気にかける存在ではないことを表現していると思われます
お父さんいい人だけに残酷です
というかほんとう、絵画か!!!抽象画か!
怪物の心情描写
怪物・・・
怪物ですよこれは
怪物の心情描写です
やはり押見先生は心情描写の神ですね
上の画像だけみても、静一が見ているのが幸せそうな家族なのか父の背中なのかぼかしていて、アングルによる哀愁が神がかっています
序盤で出た静一のヤバい精神状態を作画を崩壊させることによって表現する技術
筆者は「崩し」と呼んでいますが、12巻の裁判シーンでは多く見られましたね
この漫画は、静一の見ている世界で、静一の感情が乗っかっている視界だと、押見先生のインタビューでも語られています
絵はすべて「静一の目」というフィルターを通した世界なんです
だから母親は美しく、もしかしたら吹石さんも実際はあそこまで可愛くないのかも知れませんね
ただ、13巻で特徴的なのは「目」でしょう
静一の目がめっちゃクローズアップされていて、色々な死んだ目・狂った目が見られました
狂った静一の目は(見た目もですが)、長髪エレン・イェーガーを彷彿とさせますね笑
セリフ量が少なく、スラスラっと一瞬で読めてしまうのに、ドッシリとのしかかる心情表現には怪物のひとことです!
純文学!
僕の中身はもう死んでるから
・・・うん。しげちゃん。
もうじきそっちに行くから。
僕の中身はもう死んでるから。
外身も死ぬまで生きてるだけ。
という意味深な言葉がありました
13巻で最も理解することが難しいセリフだと思います
中身は死んでる→母から見捨てられた空虚などから精神は死んでいる
外身も死ぬまで生きてる→今生きてるのは静一という名前の何か
ということでしょうか
「外身も〜」の部分は、当たり前のことに思えますが、あえて言うことでしげちゃんへの贖罪ともう自分は死んだも同然ということを表しています
表紙で顔が半分、暗く塗りつぶされていたことも繋がっていますね
中身と外身の半分、自分は半分だけ生きている存在というメタファーを表紙に組み込むのはさすがとしか言えません!
お父さんがいい人すぎる・・・
お父さん、最後までいい人過ぎました・・・
「申し訳なかったな」というのは、静子と静一を追い詰めた、いや何も止めようとしなかったことに対する謝罪でしょう
妻と息子の暴走を見過ごしていた父ですが、夫は家庭よりも仕事を優先するという従来的な家族像からするとしょうがないとも思ってしまいます
「何が?」と聞く静一に対して、理由を言わなかったのは、あまりにも申し訳ないことが多すぎて今の元気では全て言えなかったからだと考えられます
残したお金もリアルな金額で、、、筆者は泣いてしまいました
20万円くらいでしょうか、あえてギリギリの額を描いているところにリアルと父親の本気を感じます・・・
焼き捨てても引っかかる母
母親こわい!
手紙に描いてあった「東京都」という住所が染み付いて離れない静一
13巻では母親を思い出す描写がいくつかありました
思い出すのは、あんなに心配してくれている父親よりも母親なんですよね
アヒルが生まれて最初に見た動くものを親だと思ってしまうような刷り込み
そしてアメとムチの強さを感じました
お母さんの存在が静一の中であまりにも大きすぎて、もう頼むから幸せになってくれと願うばかりです
まとめ:「血の轍」13巻の感想・考察【ネタバレ】
以上、「血の轍」13巻の感想・考察でした
13巻では初めて母が登場せず、静一とお父さんの関係に焦点が当てられました
吹石さんとの再開で変わるものはあるのか!というのが14巻の見どころですね!
やっと本章がスタートしたということでまだまだ二転三転しそうです
次巻はこちら
最終巻の感想はこちら
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