真っ黒の表紙でいよいよ、最終巻です
この黒さは、彼らに待ち受ける運命を暗示しているのか、その中に見える星の明るさを強調しているのか…
さて、漫画「チ。―地球の運動について―」8巻(最終巻)の難しいポイントの解説、見どころや感想・考察を書きます
8巻を読んだ方はぜひ、見ていってください!
前巻の要約・レビューはこちら
ネタバレはご注意を!
「チ。-地球の運動について-」8巻(最終巻・最終回)の感想・解説・考察【ネタバレ注意】
まずは、読み終わっての全体的な感想です
全員死んでハッピーエンド
出典:チ。―地球の運動について― 最終話
ええええぇぇぇえ、全員死んじゃったよ・・・
というのがまず最初に思った全体を通しての感想です
表紙の意味は、
- 7巻まで空を見上げるキャラクター達だったのが8巻で夜空になっている対比
- 死んだ魂が星になった
というような感じでしょうか
この作品では、星は好奇心や探求、信念などいろいろなメタファーがあって、そこを最後に前面に出してきた感じですね
宇宙への探究心から、人の好奇心の偉大さや信じることを全巻通して描いていました
8巻通してこの世にある全ての思想をぶち込まれた感覚すらあります
さてこの漫画、めちゃくちゃすごいことに敵も味方も主要キャラクター全員死んでハッピーエンドなんですよ笑
なんじゃこりゃ
それでは、部分部分で感想や解説をしていきます
運命に抗うシュミットさん
出典:チ。―地球の運動について― 53話
神の選択に背いたから、怖い
ヨレンタを生かしたから、怖い
コイントスを裏返したから、怖い
怖いからこそ、自分で決断した運命であり、人間
序盤から怪物のような情報量でしたね
2つの理由から、ノヴァクにも迷いが見えます
- シュミットの最後の言葉を聞いてすぐノヴァクが目を背けているから
- ノヴァクが倒れたのは、C教への迷いから脳に血を巡らせて貧血になったからor混乱したので倒れたほうが楽だと思ったから
信念を受け継ぐ感じがシュミットさんにもみえて、めちゃくちゃかっこよかったです!
ノヴァクの死
出典:チ。―地球の運動について― 57話
ガチ泣きしました…
涙の総量がエグかったです
悪役なのに。。。この物語の悪者なのに・・・
また、ヨレンタを拷問し、ノヴァクと敵対していたアントニが再登場しましたね
人生をかけた異端排除が、「勘違い」のひとことで済まされてしまうノヴァクの悲しさ
これは、エグいです
しっかりと殺した人の名前も覚えていました
「痛みを感じることを忘れてたふりをしてきた」
と言っていましたが、名前を覚えていることから、本当は痛みが心のどこかにあったのでしょう
核戦争の予知
「知性が技術が進歩した先はあの爆発だ。比べ物にならない規模の大虐殺が起こせる」
というのは、核爆弾の示唆だと思われます
ここらへんも、ノヴァクの主張がかなりストロングだと思ってしまいます
迷うのが良いのかという論点ですね
平和の象徴・ハト
ここらへんもさらっとうまいです…↓
出典:チ。―地球の運動について― 55話
平和の話をしながら、平和の象徴である鳩を映しています
しかも、カゴの中で囚われた平和→核抑止で成り立つ平和という未来の暗示も意図していると思われます
すげえ…
意志リレーの原点・ラファウとの再会
出典:チ。―地球の運動について― 57話
ある意味この漫画に対するメタ発言とも取れる「物語の悪役」という言葉にはハッとさせられました
戦争は正義vs正義なことを思い起こしますね
あと、ラファウの言う「僕らは所詮、15世紀の人だ」は面白いです
これは言葉通りにとっても良いですし、「歴史に名を残すかどうか」
アントニの言った「君らは歴史の登場人物じゃない」にもつながってきます
意志リレーの原点である超天才・ラファウも含めこの漫画に出てきた人物はほぼ全て、歴史には残らない存在でした
それはノヴァクも同じ
敵対したそれを「仲間」というのはルフィ並みの懐の広さです
ノヴァクがやり残したこと
そして、やり残したこと
何をするんだ、何をするだァーッ!!?と思っていたら、「手」
手袋に右手をはめることで、自殺した組織長がヨレンタであることがわかります
ノヴァク、ヨレンタさんが自殺したって知らなかったんですね…
やり残したことは、ヨレンタのウデかどうかの確認というよりも、ヨレンタの幸せを願うことだと思われます
(ここで筆者の涙腺崩壊は最高潮に達します…)
ノヴァクが娘と手を繋ぐという描写は、2度この漫画で出てきていましたが、やっぱり最後も・・・
最後の最後まで、「天国」という神を信じていました
これは、ドゥラカの言った、「社会から神が消えても、人の魂から神は消せない」とリンクしているような気がします
これには、もう泣きのひとことです
ドゥラカの死、ドゥラカが日の出を見て感動した理由
あぁ、やめてくれ。ラストの一人なのにいいい
と思わずにはいられないドゥラカの潔い死
ハトに意志リレーのバトンを渡し、幼い頃からずっと見れなかった日の出の眩しさに感動します
出典:チ。―地球の運動について― 39話
ずっと日の出を見れなかったのは、父の死を聞いて暗い気分のときに明るすぎるものを見ることができなかった
→父の死という過去を肯定的に直視できなかった
からだと思われます
そこに対して、死を直前にして向き合う
地球の運動を間近に感じる+全ての人生を肯定するかのような太陽の光を浴びる
ことで救われ、感動したということだと考えられます
たった一瞬の絶景を見るために生まれてきたというよりは、人生への肯定のメタファーでしょう
ドゥラカの生涯に一変の悔い無しでしょうが、それにしてもこんなにも若い少女が、読者としては悲しい限りですね
夜明け
出典:チ。―地球の運動について― 最終話
- 地動説で太陽が昇る
- 意志リレーの進みを1日の時間で表現
のダブルミーニングで、彼らの最後を一ページに
それぞれ違う場所なのに、同じく昇る太陽というやつですね
日の出、つまりドゥラカの死でようやく地動説のスタート地点ということです
コペルニクス・ガリレオが出てきたときは、日が真上にあるのでしょう
1巻からの伏線回収にトリハダでした
最終回のラファウ先生は1巻のラファウと同じ人?
結論から言うと、違います
同名の別人です
まず、ラファウくんは1巻で死んでいます
1部から2部では10年
2部から3部では更に25年経っています
最終回のアルベルトは23歳で、ラファウ先生と出会ったのは歳の感じからその約10年前なので、回想シーンは13年前です
ということは、ラファウ先生がお父さんを殺したのは、2部から3部までの間であり、1部の神童・ラファウくんとは年代が合いません
よって、年齢的に1部ラファウくんと最終回ラファウ先生の年齢が合わないことから、別人です
なぜ同じ名前にしたのかについては、意志を尊重し、探求する人でもそれぞれ考え方が違うとかだと思います
告解室にいた人はだれ??
出典:チ。―地球の運動について― 最終話
上のシーンから、告解室にいた人は、子どもの頃のヨレンタを逃がしたC教の新人異端審問官の同期だと思われます
33話にて、2人いたアントニの部下ですね
心痛いヨレンタの拷問シーンに出てきた人です
アルベルト・ブルゼフスキについてちょこっと考察
アルベルト・ブルゼフスキはポーランドの天文学者、数学者、哲学者、文学者、外交官です
こんなにいろいろな仕事や肩書を持っているのは、頭に常に「?」があり、好奇心から様々な物事に興味があったからなのかなと思いました
最後に、全巻読んでみて・・・
おっもしろかったです!!!
1部、2部、3部で、信念→自由→信仰とテーマが変わった印象があった「チ。」
しかし、最後になってある一つのテーマに集約された気がしています
それは、「?」「疑問」であり、「好奇心」です
思えば、一貫して好奇心はテーマでしたね
「チ。」がバカでかい文字の主題で、「地球の運動について」はサブタイトルなのも、地動説よりも、好奇心や信念などの概念がメインテーマだったからでしょう
コペルニクスもガリレイも登場せず、歴史に埋もれた人の物語だったわけですが、ここまでの哲学を押し付けられるとは
その押し付けが全く不快に感じず、物語にしっとり浸透しているところにこの漫画の凄さがありました!
「トリハダ立たせる力」がこの漫画はかなり強いと個人的には感じています
ただトリハダの量は、読む人の人生観にかなり左右されるので、評価は分かれそうですね
長くなったので、終わります
まとめ:「チ。-地球の運動について-」8巻(最終巻・最終回)の感想・解説・考察【ネタバレ注意】
以上、「チ。-地球の運動について-」最終巻の感想・考察でした
最終巻でドゥラカが死ぬところまではよく考えればありがちな展開
なのに、めちゃくちゃ面白いんですよね
すごい!
面白かったです!!
人の意志が見れる系ヒューマンドラマ大好き人間としても、面白かったです
次回作があれば、めっちゃ期待して読んじゃいますね笑、ではまた
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コメント
表紙は反転ってことでしょ
ご指摘ありがとうございます!
たしかに、そうですね。抜けていました。
最後の1行の
コペルニクスという名の青年がいた。
という言葉でハッとしました。
ここでようやく人類史においての 地動説 が
始まるのだなと、本当に鳥肌が止まりませんでした。
表紙は「次の観測者はお前(読者)」って意味でしょ
すみません、結局ヨレンタ名義の地球の運動についてと言う本は出版できなかったということでしょうか?
明言はされてませんが、出版されなかったと考えられます。
登場人物のほとんどは皆、「ただの15世紀の人」で、歴史に名を残す人はおらず、本の出版も作中では実行されていないからです。
ヨレンタさんは知識と意志を守りたいという信念があったはずなので、自己主張そこまでするかという問題もあり、私はそう考えました。
現実では、アルベルトの弟子であるコペルニクスが『天球の回転について』を出版していますが、ヨレンタさんの名前はありません。
作者も語っている通りこの世界はファンタジーですが、最終話でアルベルトというコペルニクスの師匠が出てきたことで、現実感があってややこしいですね…
ドゥラカちゃんもハト飛ばすのがやっとで死んでしまったし、そのハトは手紙を届けたけど本はどうなったのかな!?と思っていたので腑に落ちました、ありがとうございます(*^^*)
敵が攻めてきた時諸々埋めたとのセリフもあったようですが、やはりそれらも日の目は浴びなかったようですね。。
しかし最後に届いた手紙の内容の「地球の運動について」というチラッと漏れ聞こえたワードがアルベルトに影響を与えたかもしれないと思うとフィクションと現実が入り混じって夢があるなって思えました。
今日最終巻まで一気読みしたのでチ。のことばっかり考えちゃいます!
おもしろかった〜