「血の轍」「惡の華」「ぼくは麻理のなか」など心情描写が特徴的な数々の名作を世に出してきた奇才漫画家・押見修造
その新作「おかえりアリス」6巻の感想や考察を書いていきます
かなりマニアックな部分も読解していくので、6巻をすでに読んだ方にこの記事を読むことをおすすめします
タイトルの意味についても考えたところがあるので触れます
前巻(5巻)の感想はこちら
「おかえりアリス」6巻の感想・考察【ネタバレ】
1巻と同じ慧ちゃん単体での表紙
慧ちゃんの表情から悔しさと葛藤を感じ、ちょっとヤバいんじゃないか?という印象
目の形ももっと切れ目のシャープな感じだったので、別人のようです
ガイシューイッショクみたいな表紙ですね
それでは、読みます
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全読者を代弁して言います
いやだから、むーずいよーーーー
ということで2周目
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それでは、感想に移ります
慧ちゃんも人間
デビル三谷の生殺しにより、性に翻弄される洋ちゃんを見ての表情
6巻にして全能神・慧ちゃんの人間らしいところが初めて見えました
ダイレクトに6巻の表紙です
あのちゃん、いや、阿野さんが吐き出し先になっているのは不幸中の幸いですね
「結局僕も、その中にいる」という言葉は、性に翻弄される洋ちゃんを見て自分が嫌に思うということは、自分も性に翻弄されているというジレンマを表していると思われます
読み手としては、慧ちゃんが中途半端な人だとは思っていなかったのでこの葛藤と「中途半端」という発言は驚きでした
ただ、よく考えれば慧ちゃんも人間なので当たり前なわけで、
漫画全体にリアリティが少し加わった演出だったと思います
タイトルの意味について考察
「おかえりアリス」は、不思議の国のアリスとかけられているのではないかと思いました
- アリス(不思議の国)は、夢の国
- おかえりは、戻ってくる
ということを考えると、
おかえりアリス = 性の存在しない夢の日々に戻ってくる
と解釈することが可能だと6巻を読んで思いました
公式のタイトル回収はまだなので、一応考察として書いておきます
大人になったアリスがまた夢の国に行くという意味では、不思議の国のアリスによりアリス・イン・ワンダーランドのほうが近いかもですね
地獄への解決策
これ、また新しいことしてきましたね
やってくれたな押見先生
鳥肌がすごいです
「地獄から出してくれ」という想いで、文字通り身体が張り裂けています
裂くというのは、その後の自傷行為にもつながっていますね
- 性によって自分は自分と他の人を傷つける
- 地獄だ
- 性を無くそう
というのが洋ちゃんの主張
ニヒリズム(虚無主義)にも似た考え方に思えます
32話のタイトルが「天国」なのは皮肉ですよね
そこに、放火魔・阿野さん
事件の焚付役となってしまいました
「2人でキレイになればいい!!」は、阿野さんの中では5巻であった裸で抱き合うことを示していると思いますが、洋ちゃんには逆効果
股間に付いた鎖の表現もアーティスティックな比喩でヤバさを感じますが、その後の事件に注目したいと思います
「おかえりアリス」でも、「血の轍」における突き落とし、「惡の華」における教室荒らしのような作品を象徴する事件が起きてしまいました
「ヒビが入った」と言う洋ちゃんですが、不能になることが性から開放されることと同じかどうかは考えものです
逆に性へのあこがれが強くなってしまわないでしょうか
一致団結!
ただ、6巻で良かったこともあります
それは、洋ちゃんのケガという共通項ができたことによって、慧ちゃん、阿野さん、三谷の3人が団結したこと
共通の目的や罪の意識は、一体感を生むと感じました
「おかえりアリス」は、いろんな方向に罪悪感のやじるしが向いていますね
押見修造の分霊箱としての登場人物
あとがきも見て、改めて思うのは押見先生自身の感情を切り分けたのが登場人物ではないかということです
慧ちゃんは、性への憧れ・理想を
洋ちゃんは、性への罪悪感を
三谷は、性への翻弄と支配を
阿野さんは、自己嫌悪を
それぞれが押見先生の葛藤を生み出す精神を入れた存在だと思ってしまいます
ハガレンで、お父様が感情をホムンクルスに入れるのと同じように、想いを消化するために描いているように思います
そういえば、「惡の華」の仲村さんも洋ちゃんのように「自分をなくしたい」と言っていましたね
6巻の隠れグッドポイント
ここらへんの描き方がウマいと感じました
同じ日に阿野さんから三谷と全く同じセリフを言われて、「え?そういうこと?」となる洋ちゃん
この間のリアルさです
またもや不安になっていますね
あと、家に行くと不幸になるという方程式も出来上がってしまいました
三谷家で性への罪悪感を意識→阿野家で性から開放を意識
あまりにもきれいな1日の流れですね
もう洋ちゃんのライフはゼロなのよ…
まとめ:「おかえりアリス」6巻の感想・考察レビュー【ネタバレ】
以上、「おかえりアリス」6巻の感想でした
5巻は最も男を醜いものとして描いた巻で、「焦らされる洋ちゃん、どうなるのか!?」という終わり方でしたが、6巻は行動の伴った事件があり物語として動いた巻でしたね
最後の三谷の涙は、慧ちゃんが奪われたショックか、洋ちゃんが奪われたショックか、性の綺麗さへの感動か
物語の行く末は、破滅か出発か
7巻も気になりますね!ではまた
追記:次巻の考察はこちら
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